初恋の向こう側
誕生日には付き物の、お決まりのあの歌をヒロが歌い終わりロウソクを吹き消した俺。
きっかり一本残してバトンタッチ。
「ふぅー」と唇を窄めたヒロの姿が一瞬で見えなくなる。
「一ヶ月遅れだけど、ハッピーバースデー梓真」
「サンキュ。
メリークリスマス、ヒロ。えっと……三ヶ月遅れだな」
照明を点けずに近くの窓へ手を伸ばす。
カーテンを引くと、夜景の光が部屋の中をほのかに照らした。
「綺麗だな」
「そうだね。
宝石箱をひっくり返したようなって、こういう景色をいうのかな……ねぇ、梓真?」
「ん?」
答えながら俺は、窓の外へ向けていた視線をヒロへ向けた。
でもヒロは、キラキラ輝く夜景を眺めたままで言ったんだ。