初恋の向こう側
「勝手に決めてごめんね? 留学の話。梓真に何も相談しないで行くことにしちゃって」
「でも夢の為なんだし……心理療法士になるんだろ?」
「うん」
静かに頷いたヒロを見て、胸が狭まるように苦しくなった。
本当は納得なんてしていない。
本音を言えば、心理学なんて日本の大学でも勉強できるだろうって、そんな遠くへ行くなよって思ってるんだ。
だけどヒロは、留学する事は年が明けて早々に決めていたみたいで、もともと外国で生活する事に興味があったらしいけど。
オバさんが生きていた頃は諦めていたらしい。
病気の母親を置いて行くのは無理だから、それで夏休みだけの短期留学に参加したと言っていた。
でも、そのオバさんが亡くなった。
苦しみ悩んで、どうしようもない悲しみの中でヒロは、一つの目標を見つけたんだ。
それを止める事なんて俺には出来ない。
「行くなよ」なんて、言える事ではないんだ。