初恋の向こう側

「そんなヒロも、たまには素直でいいんじゃないの?」

「それじゃあ、いつもは素直じゃないみたいに聞こえるけど?」

「みたいって自覚ないのかよ」


言い返すとますます唇を突き出したから、迷わずそこへキスをした。

そして、また抱きしめる。

甘いシャンプーの匂いを感じながら目を閉じた。


「留学したら、一発で大学受かるようにちゃんとやれよ? じゃなきゃさ……じゃなきゃ帰ってくるのが遅くなるだろ」

「そんなの梓真に言われなくてもわかってるよ。
梓真だって、あたしがいない間に浮気なんてしたら承知しないからね」

「するわけないだろ。ヒロだって、ブロンド男に声かけられてもついてっちゃダメだからな」

「何言ってんのよ?」


クスッと笑ったヒロの体が腕の中で少し揺れた。


「待ってるから、俺待ってるから……しっかり頑張ってこい」

「うん。ありがと」

「行っておいで……茉紘」

「…行ってきます、梓真」

< 374 / 380 >

この作品をシェア

pagetop