初恋の向こう側

バスケ部のキャプテンでエースの成沢 龍司(なりさわ・りゅうじ)。

校内では結構な有名人で、そういうのに疎い俺でも知っている。

遠目でしか見たことなかったけど、近くで見るとやっぱりデカい。

190センチ近いと思われる身長に、一目で純粋な日本人ではないとわかる風貌は、否応なしに目立っていた。


「はい、どれですか?」


とオサが訊き返すと成沢は、左手をポケットに突っこんだまま首を傾げて前方を差した。

左耳でゴールドのピアスがジャラジャラと揺れているのが目についた。


「さっき、ランニングホームラン打った、あの娘」


オサが隣にいる俺をチラ見してから答える。


「クラスは違うけど、知ってます」

「名前、なんていうの?」

「えっと、椎名ー……」


そこで口ごもったオサの視線を感じて、「茉紘です」と答えると成沢は、俺と視線を合わせ片方の口端だけ持ち上げて笑った。


「シイナ マヒロ、ね。
サンキュ!」



< 40 / 380 >

この作品をシェア

pagetop