初恋の向こう側
バスケ部のキャプテンでエースの成沢 龍司(なりさわ・りゅうじ)。
校内では結構な有名人で、そういうのに疎い俺でも知っている。
遠目でしか見たことなかったけど、近くで見るとやっぱりデカい。
190センチ近いと思われる身長に、一目で純粋な日本人ではないとわかる風貌は、否応なしに目立っていた。
「はい、どれですか?」
とオサが訊き返すと成沢は、左手をポケットに突っこんだまま首を傾げて前方を差した。
左耳でゴールドのピアスがジャラジャラと揺れているのが目についた。
「さっき、ランニングホームラン打った、あの娘」
オサが隣にいる俺をチラ見してから答える。
「クラスは違うけど、知ってます」
「名前、なんていうの?」
「えっと、椎名ー……」
そこで口ごもったオサの視線を感じて、「茉紘です」と答えると成沢は、俺と視線を合わせ片方の口端だけ持ち上げて笑った。
「シイナ マヒロ、ね。
サンキュ!」