初恋の向こう側

そして、くるっと顔をこっちへ向けたヒロが、突然こんなことを口にした。


「どうしてウソなんかついたの、梓真?」

「なんだよそれ? 嘘ってなんの話だよ?」

「ユースどころかトレセンにも入れなかった、って言ってたじゃない?

ねぇ、どうして?」


そこへ、慌ててオサが口を挟んだ。


「梓真、ごめん。俺が話したんだ」


眉毛をヘの字に下げた目の前の顔が『マズかった?』と言っている。


「ちゃんとトレセンにも選ばれてたし、ジュニアユースにも所属してたんじゃない?」

「だから?」

「あたしが訊きたいのは、どうしてそれを隠したかっていうこと!」


一気に嫌なムードが漂う。


「ヒロには、なんでも話さなきゃいけないのかよ?」

「話してよ」

「なんで?」


……なんでこうなるんだよ。


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