初恋の向こう側
「ケガ?」
「三年になったばかりの時、練習中にケガしたんだ。
靱帯断裂で即入院。手術して退院した後も一年近くリハビリ通ってさ。大変だったんだよ」
オサの話に俺も黙って耳を傾けた。
まるで他人事みたいに聞こえて、少し滑稽だった。
「そんなに長い間、試合に出れないどころか練習にも参加できなくて。
それで、あんなにリハビリ頑張ったのに……その後でドクターストップ、なんて……」
そこでオサは、大きく息を吐いた。
「あんなことがなきゃ……でなきゃ梓真なら、あの頃の梓真の実力なら、今頃こんなとこにいねーよ!
もっと違う高校へ行ってるよ !!」
ソフトボールの最後の試合が終わり、生徒達の群れが余所へ流れていく。
俺等三人だけが取り残されたように、その場所にへばりついていた。