初恋の向こう側
その横で俺は、さっき渡された紙に自分の名前を書いている。
そこには《従業員登録書》とあって……しかも手書きで。
こういうのって普通、パソコン使わないか? ってツッコミたくなる。
本当は、せっかくバイトするんならオシャレなカフェとかCDショップ、それがダメならコンビニかファーストフードあたりで……なぁんて思っていたんだけど。
夕食の時間に『バイトがしたい』って言った俺の発言を受けて、その二日後に父さんが一枚の写メを持ち帰った。
そこに写っていたのが、この店の前に張り出されていた募集広告。
そこにはこう書いてあった。
『山上古書店 求む 店員1名』と、やっぱり手書きで。
なんだか、その文字に惹かれて……というか面白半分で来てみたら。
名前も聞かずに「採用です」だって。