初恋の向こう側
「俺、面接受けに来たんですけど」
と言ってみる。実際は面接なんてやってないけど。
「僕は、タクヤ」
「え?」
「タークーヤ」
……あぁー、名前ね。
タクヤが、顎で何か促すような仕草をしている。
ん? ……あっ なるほどね。
俺にも自己紹介やれってことか。
そこで
「俺は、佐伯 梓真っていいます」
と軽く頭をさげると
「書けましたか?」
と、さっきの店長らしきオッサンが戻ってきた。
そしてタクヤに気づいて声をかけた。
「おはようございます。
紹介しますね。こちらは新しく働いてもらうことになった佐伯 梓真君です。
それから佐伯君?」
「はい」
「こっちはバイトの、ナカモリ ミノル君です」
は。……ミ、ミノル!?
タクヤじゃないの?