初恋の向こう側
渡り廊下の先に扉があって、その先にもまた扉。
しかも、いくつも鍵がついた異質な場所だった。
途中の詰め所でヒロが、慣れた感じで受け付けを済ませ、そして更に奥へ進むと ……
耳に届くのは、声?
それは例えるなら、得体の知れない生き物の呻き声のような、そんな音だった。
一歩づつ前へ足を踏み出すごとに、それは幾重にもコダマする叫びとなり ──
俺は走った。
回れ右をして、ひたすら来た道を戻った。
怖かった。怖くて堪らなかった。
そのまま病院の外へ飛び出し、花壇の端で膝を抱えていると、しばらくしてヒロが出てきた。
『帰ろっか』
前を向いたままヒロが言って歩きだし、それに俺も黙って続いた。