初恋の向こう側
学校から帰ると、家の前に人だかりができていた。
掻き分け最前列まで出ると、救急車が停まっていた。
「梓真っ!」
駆け寄って来た母さんに肩を抱かれた。
人だかりは正しくは俺の家ではなく、隣のヒロの家の前に溢れていた。
玄関の扉が開き、担架に乗せられたオバさんが運びだされる。
呼吸器マスクをつけ、青い顔をしたオバサンの姿。
それを全身ずぶ濡れになったヒロが、黙って見ていた。
隣にはピンク色の傘が転がっていた。
後から聞いた話では、ガス管を咥えて台所に倒れていたヒロのオバさんを近所の人が見つけたんだという。
そして少ししてヒロ達一家は、市外へ越して行った。