初恋の向こう側

夕食を終えて、二階の俺の部屋に入ると……また居た。


「おい、不法侵入だぞ」

と言ったのに


「ねぇ、見て! 梓真」

って、まったく聞いてない。


それに俺等って、気まずくなってたはずじゃん?

なのにこうやって、なーんにもなかったみたいに接してくるんだよな……ヒロは。

『見て』とヒロが広げたのは、小さい頃のアルバム。


「懐かしくない?」

「まぁな」


浴衣を着て並んで写るヒロと俺。夏祭りの時の写真だ。

確かに懐かしいかも。


「この時、金魚すくいやったの覚えてる?
梓真ったらヘタクソだからすぐに網破いちゃって、泣いてたよね?」

「そんなの覚えてないよ」

「それであたしが、梓真の分も捕ってやったの。
その後で花火見に行ったらオバさん達とはぐれちゃって……梓真、またビービー泣いてさ」


とクスクス笑うヒロ。


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