初恋の向こう側
確かに、いつもそうだった。
泣き虫な俺と勝ち気なヒロ。
幼稚園の遠足の時。
体の大きな年長組の園児にオヤツを奪われて、俺はただ泣くばかり。
そしたらヒロが『返しなさいよ』って取り返しに行ったんだ。
近所の公園で木登りしていた時もそうだった。
登ったはいいが下りれなくなって泣いてる俺を、手をとって助けてくれたのもヒロ。
昔飼っていた犬のチロが死んだ時。
土手の上でオンオン泣いてる俺の横で、 “犬のおまわりさん” を歌ったヒロ。
声張り上げ、何回も何回も繰り返し歌っていたっけ……。
そういや、ヒロが泣いているのは見たことがないかも。
小さい頃からいつも気丈だったヒロ。
オバさんが自殺を図ったあの雨の日だって、涙ひとつ流さなかった。