初恋の向こう側

それから、店に来る客を見ていても飽きないんだよね。

医学、政治、人文……等々、学術書の品揃えが多いから大学の教授なんかが来たり。

まっ 教授じゃないかっていうのは、中森さんの勝手な見解だけどさ。

誰が読むんだっていうような魔法や魔術関係の本を、全身黒ずくめの怪しい中年女がお買い上げとかね。

それから何故?ってくらい、エロ系の古本も多いこの店。

それ狙いの客はマジでヤバい奴等ばかりで、中でも一日置きに顔を出す “小暮さん“ の存在感は群を抜く。

顎の辺りまで伸びた髪は、特に前髪がベタベタといつでも額に密着していて、フレームにヒビが入ったままの眼鏡の奥にミミズのような目があり、その下の油ギッシュな団子鼻からは、これでもかといわんばかりに鼻毛が飛び出している。

いつでもカサカサの分厚い唇と、虫歯だらけで並びの悪い歯。吹き出物でいっぱいの肌に、手の甲までモジャモジャな毛深さ ──

あぁー、思い出しただけで気分が悪いかも……。

とにかく、女子高生いっぱいの電車に乗り込んだら、100%の確立で悲鳴が上がるんじゃないかってくらいスゴ過ぎなのだ。


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