初恋の向こう側
突然、「あれ?」と言って、レジの向こう側に屈みこんだ中森さん。
机と床の隙間から拾い出した物を見せた。
「何だこれ?」
薄っぺらなに布地の迷彩模様……どうやらパスケースらしい。
相当使い込んでいるらしく、生地が擦り切れおまけに酷く汚れている。
おもむろに開かれた中を見た瞬間、俺は思わず声を上げた。
「うっわぁーーっ!!!」
その雄叫びにビビった中森さんが、パスケースを放り投げ叫んだ。
「なっ なにーーっ !?」
一瞬にして静まる店内。
「……」
「……」
無言のまま、顔を見合わせる。
「……中、見なかったんですか?」
「見てないよぉー。佐伯君の声に驚いちゃって」
ひきつりながら、もう一度拾い上げて中を見た中森さんが絶句した。
パスケースを開くと、片側には運転免許証、反対側には何枚ものカードが押し込められていて。
俺が悲鳴を上げたのは、その免許証の写真の顔である。
それは店の常連の小暮さん。
実物も凄いが、写真の小暮さんも不気味極まりなかった。