初恋の向こう側

そして中森さんは、ぎゅうぎゅう詰めのカードの束に手をかけた。


「見るんですか?」

「ね、念のためだよ」


何が念のためだよ。
小暮さんの持ち物に間違いはないだろ?

俺としては、触りたくもない代物だけど……。

異臭まで漂ってきそうなパスケースから取りだされた物を見て、またも絶句した俺等。

そこに入っていたのは……ヘルスの会員券が4枚に、ポイントカードが3枚。

イメクラの会員券が1枚、風俗嬢の物と思われる名刺が7枚。

それにラブホのカードが1枚 ──

よくもこんなに詰め込んだものだ。

2次元世界をこよなく愛する中森さんには、ちょっと刺激が強すぎたかな?

風俗まみれのその中身に、彼の口は半開きになったままだ。

でもいくら仕事とはいえ、小暮さんの相手をしなきゃいけない風俗のお姉さんには同情してしまう。


「あれ? こっちにもまだ入ってるみたいだよ」


中森さんが言った。

見ると確かに、免許証の真ん中辺りが膨らんでいる。


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