初恋の向こう側
甘い誘惑
夏休みも残り、十日程となった。
朝起きてカーテンを開けると、制服姿のヒロが隣の玄関から飛びだして行くのが見えた。
夏休み中といっても部活組は忙しい。
そういや、オサにも全然会ってないな……。
まっ 俺と会う暇なんて、今のオサにはないだろうけど。
なんてたって奴には、出来たてほやほやの彼女がいるんだから……。
───
家を出て駅へと歩きだす。
電車に揺られバスに揺られ、いつもの場所へと向かう。
昨日より俺の足取りが軽いのは、今日のシフトが中森さん、とではなく哉子さんとだからである。
十時十分前に店に入り店長と交替した。
そしてひたすら漫画に没頭して、時間が過ぎるのを待つ、のである。