初恋の向こう側
今日の哉子さんはいつになく冗舌だ。
それが酒のせいであるのは、一目瞭然なんだけど。
「ラーメン屋でこんな飲んでる人、見たことないんですけど…」
「そ~お?」
テーブルに肩肘をつき真っ赤になってる顔を覗けば、虚ろな目でビールが注がれたグラスに口をつける彼女。
まだ夕方の5時過ぎだというのに、哉子さんはすっかりできあがってしまっていた。実際に飲んでる量は、それほどでもないんだけど……。
思いがけぬ棚ぼた?
哉子さんとデート?
なぁーんて、浮かれ気分はどこへやら。
やっぱりラーメン屋なんかじゃなくて、もっとムードのあるとこにするべきだったかなぁー。
なんて、今更の後悔と共に溜め息をついた。