初恋の向こう側
ここで待っていても仕様がない。
「おじゃましまーす…」
靴を脱いであがると、細くてそれ程奥行きの無いキッチンと、その奥に8畳程の部屋があるだけだった。
部屋に入ったもののどうしたらいいかわからず、所在無げに突っ立って中の様子を遠慮気味に伺う。
暫くすると、水の流れる音とドアの開く音が同時にして、トイレから出てきたらしい哉子さんが歩いてきた。
その足取りは、さっきよりしっかりしてるように見える。
「吐いた?」
「ううん。引っ込んじゃった」
「まだ気持ち悪い?」
「大丈夫」
と笑顔で答えた彼女。
そういや、とっろ~んなんてしてた目も普通に戻っているかも。