初恋の向こう側
「なにか飲み物持ってくるね?」
「えっ」
「だいじょーぶ! もうお酒は飲まないから」
笑いながら言った彼女は、やはりしっかりした足取りでキッチンへ向かった。
「冷たいお茶でいい?」
「はい。いいっすよ」
まっ、お茶の一杯くらいいいだろう。
もう大丈夫そうだし、それを飲んだら帰ろうとその時は思っていた。
「哉子さんって、酒飲めない系?」
「うん。飲めない系だし、もともと飲まない系」
「は? じゃあ、今日はなんで飲んだの?」
「んん~?
……なんとなく、かな」
戻ってきた哉子さんは、グラスを二つ小さなテーブルへ置いた。