初恋の向こう側
「じゃあ、一人暮らしじゃない女子の部屋にはよく入るんだ?」
「そんなこと言ってないでしょ」
「あっ 今、目逸らしたー!
よく入るんだぁ~?」
なんてイタズラな顔で笑う、こんな責めの哉子さんは珍しい……ってか初めてだろ。
まだ酒が残ってんのかな?
「女の子の部屋自体、入ることないし」
という俺の言葉にすぐに返してくる。
「彼女の部屋は?」
「彼女なんていないし」
すると哉子さんは片腕をテーブルに置き、もう片方の手を床について、座ったまま俺との距離を縮めた。
「嘘つきぃー」
「嘘じゃないよ」
やっぱり酔ってるのかな?
「佐伯君は背も高いしー、こ~んなに綺麗な顔してるのに、どうして?」
下から俺の顔を見上げ覗きこむ。
明らかにさっきまでとは違う彼女の態度に戸惑い、目を合わせていられなくて……逸らした。