初恋の向こう側
そして、なんとなく漂わせた視線の先に見えたもの。
キッチンの流し台の上に置かれたそれを見て、昼ドラかよ、って心の中でツッコんだ。
「哉子さんこそ彼氏がいるんだったら、俺みたいなのは早く追いださないとダメでしょ?」
立ち上がろうと左手をテーブルに置く。すると、その上に彼女の手が重なってきて。
「でも、もうダメになるかもしれないんだ…」
言いながら振り返り俺が見たものを確認し、また向き直った。
「なんか、あったんですか?」
熱っぽいその目に見つめられ、帰ろうとしていたことを忘れそうになる。
代わりに心臓が激しく騒ぎだし……その時。
ドン! ヒュー~ッ
バンッ ババンッ !!
外から、打ち上げ花火の音が聞こえてきた。
そういや今日は土曜日だ ──
……そう思った瞬間だった。
哉子さんが、俺の唇に自分の唇を押しあててきたんだ。