初恋の向こう側
ひと夏の終わり
ブラインドから漏れる光が、朝の訪れを告げていた。
隣で寝息を立てている哉子さんは、下半身だけ下着を着けた格好でうつ伏せになっている。
薄っぺらな上半身と、肉付きの悪い少年のような尻。
それを眺めたところで何も感じない。微塵の色気も僅かな高鳴りも、可笑しなくらいに。
昨夜はあれほど掻き立てられた俺の欲望は、もう今は目の前の彼女に何も欲していないらしい。
足元に丸まっているケットを引っぱり、その体に掛けた。
ベッドから這い出て、デニムに足を通しTシャツを被る。
ポケットに入れっぱなしだった携帯を出して見るが、電池切れしていた。
でも、もう始発も動きだしている頃だろう。
キッチンには、並んでカップの中に収まっている揃いの歯ブラシ。
その横をスルーして玄関を出た。
ドアに鍵をかけ、ピンク地に水色の水玉のついたカギを郵便受けに投げ込んだ。