初恋の向こう側
電車に乗りこんだ俺は、昨夜のことを思いだしていた。
例えば、彼女がシャワーを浴びている間に帰っても良かったんだ。
でも俺の理性は、存在価値がわからないほど呆気なく欲望の波にさらわれてしまった。本当に驚くほど愚かに。
そんなこといったって、今さら後悔してるわけでもない。
でも、満足感より喪失感を抱えてんのは何故だろう?
哉子さんは、淫靡な目をして俺の体のあちこちに舌を這わせた。
俺の上で、激しく腰を揺らし顔を歪めた。
昨夜の彼女が、いつも店で会う彼女と別人のようだったから?
いや、そうじゃない。哉子さんばかりに非があるわけじゃない。
そうだよ、俺はちゃんと自覚してるんだ。理由が他にあることを。