初恋の向こう側
* * *
「それで、経験しちゃったってこと?」
「……そういうこと」
その日の夕方、オサの部活が終わってからファミレスに来ていた。
昨夜の出来事を一通り話し終えた時、オサの口はあんぐりと開いたままだった。
「そっりゃー仕方ねえよな~。
年上のお姉様に襲われてたんじゃ、祭りどころじゃないよねぇ~?」
ニタニタしながらストローに口を付けたオサが、残りのコーヒーを一気に吸い込んだ。
その前に座り、本日何度目かもわからない溜め息を吐き出すと、オサから突っ込まれた。
「それでよー、何をそんなに落ちちゃってんの?」
「ん? その、なんつーかさ……」
身体に感じてた疲れは、睡眠のおかげで回復したのに。未だ取れない頭の疲労感。
脳みそが重いっつーか、ダルいっつーか……。
『なんつーかさ』って言いかけて、その後の言葉が続かない俺に代わり、珍しく真面目な顔をしたオサが言った。
「それはつまり、そこに愛がなかったからじゃねーの?」