溺愛女神様―青空の瞳―

部屋の中は想像以上に広い―――さすが、王城

レイがほうけている横でカナンはクローゼットの中から一着のドレスを取り出した

「レイ様。これでよろしいでしょうか?」

広げて見せられたのはウエディングドレスか、と言いたくなるような白いドレスだった

「なんでドレスなんか……」

「この世界ではドレスが普通なのです。それにエドガー様の意思なのです」

ドレスを持って近づいてくるカナンはレイに僅かな恐怖を与えた

「も、もうちょっと、動きやすそうなのは……?」

カナンに圧倒され、反抗する気も失せたレイは、せめてもっと裾が短くて動きやすいものを、とカナンに要求する

「あら…残念です。絶対に似合うと思いましたのに…。では、こちらはどうでしょう?」


新たに取り出したドレスは裾が足首ほどの比較的動きやすい印象を受ける

色に関しては譲れないのか同じく白色だ

「じ、じゃあ…それで………」

レイがドレスを受け取ろうと手を伸ばすと、カナンはそれをひょいと避ける

「カナンさん?」

「カナン、です。」

にっこりと、しかし、譲らないとばかりの圧力を感じる

笑顔が黒い――――

レイは底知れないカナンの怖さにびくびくしながら彼女の要求通りにカナンと呼ぶことにした


「…カナン、ドレスを頂戴……」

「いえ、お着替えを手伝うのも私の役目です。ですから、レイ様は何もしなくてよいのです」

その言葉にレイは目を見開き、羞恥に頬を染める

「ひ、ひひ一人で着替えられますからっ!!」

と、言うや否やバッとドレスをカナンの手元から取り、寝室と思われる部屋に飛び込んだ

レイのあまりの速さにカナンは口をぽかんと開けて、その後ろ姿を見送った








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