溺愛女神様―青空の瞳―

踵をみると傷は完璧に癒えていた

「ありがとう」

「い、いえっ…」

レイが笑顔でお礼を言うとヤトは焦ったように立ち上がり、はにかんだ

ちょうどその時、カナンがヒールの低いパンプスのような履物を手にして戻ってきた

「ご苦労だったな、カナン」

「いえ」

エドガーはカナンに一言かけると靴を受け取り、レイに向かい合い、しゃがんだ

「レイ、俺の肩に掴まれ」

「は、はい」

体勢が不安定にならないように自分の肩にレイの手を置かせるとエドガーは片方ずつ靴を履きかえさせた



そんな二人を見ていたカナンは笑みを浮かべながら呟いた

「まるで仲睦まじい夫婦のようですね」

「夫婦……ですか。」

独り言のようなカナンの言葉にアイルはエドガーたちを見遣った

自分の主が何故あんなことまで……――と思いながらも、先程出会ったばかりとは思えない雰囲気の二人に何も言えなかった







「ありがとう王様」

靴を履かせてもらったレイがエドガーを見上げてお礼を言うと彼は不満そうな表情を浮かべた

「その“王様”という呼び方はなんとかならないのか」

「だって、王様は王様でしょ?」

「名前で呼べばいいだろう」

少し拗ねたような表情

「じゃあ、エドガー様」

「エドでいいだろ…?」

あなたが良くても従者のアイルさんが怖いんですよ

さっきの部屋での出来事をもう忘れてしまったんですか?

「なんだ。アイルのことを気にしているのか?」

目を丸くしながら問うエドガーに頷いて示すと彼は爽やかな笑みを浮かべ、胸を張る

「俺がエドと呼べと言っているのだから、誰も責めることはできない。だから気にするな!」


見かけに寄らず、強引なんだな――とレイは呆気に取られた




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