溺愛女神様―青空の瞳―
「アンナっ!!」
ヨルがそう叫びながら飛び出した
それに男は忌ま忌ましそうに視線を向ける
「なんだぁ?お前、コイツの知り合いか?ちょうどいい…この服の弁償を―――――」
「離せ」
「あん?」
自分の言葉を遮った低い声で発せられた呟きに男は眉を寄せて首を捻る
「離せと言っている」
鋭い声――彼の背しか見えないレイには彼の声からしか、その怒りの程を知るしかない
だが、その場が静まるくらいには強い怒気を感じる
「ヨルにぃ!」
少女は手を延ばしてヨルに助けを求める
一瞬、少女に視線を向け、そして再び男に視線を移す
「その手を離せ、下郎が…!!」
「な、なんなんだよ…」
殺気を溢れさせるヨルの気迫に負けた男はいそいそとその場を後にする
解放された少女、アンナは一目散にヨルの元にやって来て抱き着いた
「ヨルにぃ!!!」
「アンナ…!」
ヨルはそれを難無く受け止め、慰めるように頭を撫でる
アンナは涙を浮かべながらもそれを気持ち良さそうに目を細めて受ける
「ヨルの妹さん?」
レイが浮かんだ疑問をそのまま口にするとヨルは首を緩く左右に振った
「アンナとは血の繋がりはない。だが共に暮らしている」
何やら深い理由があるらしい――思わず目線を下げるとアンナの膝から血が出ているのが視界に入った
「怪我してるよ!」
レイに言われて気づいたのかアンナは自分の足に視線を向けた
「さっきこけちゃったときのだ」
気づいてしまうとその痛みにも気づき始めてしまうものでアンナの目には再び涙が浮かんできた
それを見たレイは手当て出来るものはないかと探ったが制服のときなら絆創膏の一枚や二枚も持っていただろうに
今はドレス――何も持っていない