彼の愛は永遠だから、サヨナラは言わない
弘也が私の前からいなくなって一年が過ぎた。


野球部で毎日頑張ってるけど、寂しくなると弘也と過ごしたマンションへ行ってみたりして、本当にバカだと思う。


星野監督とはいい関係で、野球部のみんなとも一年前とは違い、かなり仲良くなった。


それに新入部員が増え、可愛いマネージャーも入ったから、楽しい事は確かなのに、何かが物足りなかった。


弘也不足かな。


弘也の死を認められずにいるからなのか、弘也のマンション前に本当に弘也がいた。


やっぱり、弘也は生きてたんだ。


思わず弘也に抱きつくと、いきなり地面に叩きつけられた。


「おい、いきなり何をする気だ。男に痴漢される覚えはないぞ。」


男って誰の事?


もしかして、私の事ですか。


私は女ですから、嫌、ユニフォーム着たままの私は女子には見えないかも。


弘也にしか見えないその男がまじまじと私の顔を見た。


「あ、もしかして、お前が千比絽なのか。」


やっぱり、弘也なの。


嬉しくてもう一度抱きつこうとすると。


「俺は弘也じゃいから、弘也の弟の雅也だ。」


弘也に弟がいただなんて知らなかった。


顔はそっくりだけど、なんかやな感じがする。


「弘也が好きだった、男女の千比絽がお前か、どう見ても男だな。」


やっぱり、弘也ではなかった。


深く関わりたくないから、この場から逃げようと思った。


なのに、その男は言ったのだ。


「明日から江南高校の野球部に入るから、よろしくな。」


嘘だ。


絶対、この男とは関わりたくない。


前途多難な予感がした。


弘也のバカ。


弟がいること教えて置きなさいよ。










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