RED×HEAVEN
「嬉しくは…ねぇよな。

いくら天国だっていっても、死んだ事には変わりねぇもんな。

心残りがあるのか?」



男に心残りがある事はわかっていた。



この男は、妻と子供を遺して死んでしまったのだから。



わかっていて、それでも聞いてしまったのは何故だろう。



男の後悔を聞いても、俺にはどうしてやる事も出来ないのに。



「心残りは…ある。

俺の不注意のせいで事故を起こしてしまって…

相手の人がどうなったのか知りたい」



男の答えは俺が予想していたものとは違っていた。



それに、その事故はこの男のせいではなく、相手の前方不注意によって起こったはずだ。



「相手は生きてる。

かすり傷程度だったそうだ。

その事故はお前のせいじゃないだろう?」



男は俺が言い終わる前に、首を横に降り始めていた。



「死んでなくてよかったけど、俺がもう少し早くブレーキを踏んでいれば事故は起こらなかったかも知れない。

誰も怪我をしなかったかも知れない」



この男は、絶対に天国に行くべき魂だ。
< 244 / 262 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop