RED×HEAVEN
「頑張って気にしないようにしてるのに、そんな事言うなよ」



男は弱々しく言った。



やはり強がっていただけだったようだ。



相手を心底信頼していれば大丈夫だと思えるかも知れないし、そう言えるのだろう。



でも、そう言っている本人は大丈夫ではないのが、血の通った人間なのだと思う。



この男は、不可抗力で突然命を奪われた。



自分が死んだ事をまだ受け止めきれていないのに、愛する者たちの事をはっきりと大丈夫などと言い切れるはずがない。



悪い事を口走ったと後悔した。



「すまなかった。

天国に行けば、ずっと2人を見守る事が出来るはずだ」



定かではないが、そんな気がした。



「そう出来ればいいな…。ありがとう」



礼を言われる筋合いはないが、否定するのもどうかと思い、それ以上は何も言わなかった。
< 246 / 262 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop