死神少女
 私には兄がいた。

 神山裕輔。

 穏やかで優しい人だった。

 ・・・全て過去形なのは、兄を亡くしているからだ。

 ある日。

 そう、今日みたいに暑い日。

 兄は車に飛び込んだ。

 猫を助けようとしたらしい。

 ・・・兄さんは、やさしかった。

 私も、兄さんがいた頃は死にたいだなんて思わなかった。

 兄さんが死んだ5年前から、私達家族は壊れてしまった。

 私は、そんな家族が嫌で一人暮らししている。

 母さんはぼんやりと、機械的に毎日を送るようになった。

 父さんは仕事に打ち込み、家に帰ってこなくなった。

 私は、死にたくなった。

 
 兄さんがいなくなって、私達は心の一部を壊してしまったのだ。
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