Love and Poison
「エミーは心配性だな」
好きなゲームキャラクターから付けたと言うそのニックネーム
恐らくは嘘だろう
この男が本心から他人の作った商品に入れ込むなんて考えられない
せいぜいそういう幼稚さを経営者仲間の飲み会ででも自慢するのだろう

人付き合いは嫌いなどと言うとあらぬ説教の集中砲火を食らうので
痛々しいキャラを演じているのだろう
私はそのためのアリバイなのだ

セックスにもさして興味は無いらしく
まぁそれでもしかるべき所でしかるべき行為はあったのだが
早々とシャワーを浴びて身なりと髪型を整える
映画の悪役ガウンとブランデーグラスが似合うと思っているのか
年齢に不釣合いな貫禄を出したがる

「この男幼稚だな」
最初の朝はそんな事を思っていた
徐々にその幼稚さの徹底ぷりに感心し
イミテイションである幼稚さを貫かねば安心出来ない心理状態に興味を持ち
今はその虚構を維持する事に協力さえしてしまっている

「共犯者」とでも表現するのが相応しい
この男は常に嘘をついている
社員に対してもビジネス相手にもプライベートであるべき友人にも
世間に注目される事が自分の演技の完璧さを確かめる手段であるかの様に
羨望される事を苦々しく思いつつも
安直に騙される彼らを冷笑してもいる

敢えて理由を求めるのであれば
その企てに自分が貢献している事が快楽だった
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