妖恋華
男がぼそっと何かを呟いたが乙姫には何と言ったのか分からなからず、口を開こうとした瞬間に男に腕を掴まれた。
「な、…!」
やっとの思いで声を絞り出したが男の取った行為に言葉が詰まりちゃんとしたものにはならなかった。
有ろう事か男は滴る鮮血に舌を這わせ始めたのだ。
傷を舐めるという行為はちょっとした傷の場合はあるかもしれない。
だが、これは違う。
男は美味しそうにそれを舐めている。
こんなのは人間がする反応じゃない――。
逃げたいのに体が言うことを聞かないのが情けなくもあり悔しかった。
「お前…何者だ…?」
血を舐めながら男が問う。
「あ、あなた…こそ」
震える声で問い返す。
こんなことを聞いて何になるのだろうかと思ったが言葉が勝手に出たのだ。
「俺か…?俺は…」
男は手から舌を離し、笑みを浮かべた。
その瞬間、男の髪の隙間から角が顔を出し始めた。乙姫はそれに目を見開き、固まる。
そしてを男が言葉を紡ごうとした時だった――――。
「おい…!そこで何をしている!?」
別の男の声が静かな森に響いた