妖恋華


「………どうして…あなたみたいな…何の取り柄もない子が花嫁なの?」

「…花嫁」

もしかして、この人も神隠しにあった被害者?
にしては“花嫁”になりたがってる感じ……

そこで虎太郎の言葉を思い出す――――
“花嫁”を言葉通りの意味で捉えてる女の子たちは結構乗り気だったりするんだよね”

この人は多分、その言葉通りの花嫁になりたい人だ。

そう確信した。



「ただ神薙だからってだけで、どうして戒斗君の花嫁になれるの!?」

黒髪から覗いた瞳に映るのは、はっきりとした憎悪と敵意、いや殺意

ゆっくり、ゆっくり近づく姿は幽鬼のような不気味さを放つ
壁に追いやられた乙姫は真紀が近づいてくるのを待つしかない

そんな時――――

「何をしてる?」

男の声が響いた。
低く、鋭く、冷たい声。

乙姫は誰だろうと疑問符を浮かべそちらを見た。
そして、真紀は動揺を宿した目でそちらを見ていた

「戒斗君!?どうしてここに?」

戒斗―――この男の人が摎 戒斗?




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