妖恋華


乙姫は驚きの目で彼を見つめ、彼もまた乙姫を視界にいれると軽く目を見張った

「戒斗君!そんな子見ないで!」

戒斗は無言で真紀を一瞥し、再び乙姫を見る

「お前が…神薙の…」

そう呟き、乙姫のほうへ歩みを進める。そして乙姫を見下ろすように前に立つ

さっきとは違った感覚が襲う。

何だろ…これ―――胸がざわつく。熱い。

「お前は、変えられるか?」

「…?」

言葉の真意が分からず疑問符を浮かべる

「変えられないなら―――殺すだけだ」

「っ―!」

再び本能が告げる警鐘が鳴り響く。
彼が“人”でないからか、先程とは比べものにならないレベルの話だ

延びてきた手に恐怖を覚え、反射的に目を瞑る





「ふっ…。巫の守護妖か」

戒斗の呟きに聞き覚えのある単語を見出だし乙姫はソッと目を開く

目の前には制服を身に纏った大きな背中

「青…」

乙姫を庇うように立つ彼は乙姫の呼びかけに応えるように一瞬だけこちらに視線をやり、再び戒斗に視線をやった

「摎 戒斗。ここで何をしている?」

鋭い問いに戒斗は嘲笑を浮かべながら口を開いた




< 102 / 103 >

この作品をシェア

pagetop