妖恋華
「そうよ。この子は【神薙】の血筋。」
「神薙…?」
この状況で何故か出された自分の姓。そして、先程知ったばかりの祖母の姓――
「そうね。あなたには知っておいて貰わなくてはならないわね。」
知る……一体何を――?
華紅夜はとても落ち着いた声で話し始めた。
隣に座る二人にも緊張感が生まれたのが分かり、乙姫も自然と身体に力が入った。
「率直に言うわ。この神名火村は神と妖、そして人が住まう村なの。」
「え…?」
馴染みのない言葉というより、まるで何かの物語に出てきそうな浮き世離れした単語。
思わず間抜けな声が漏れる。
自分をからかっているのではないかと乙姫は疑惑の視線を華紅夜に向けるが、目の前の女性は真剣な表情を崩さず、横の二人も真面目な顔で話を聞いている。
その雰囲気から乙姫は何も言い出すことは出来ず、ただ黙って先を促すしかできなかった。