妖恋華
虎太郎は何故か今朝から動揺している青を“珍しい”と妙に感嘆しながら見つめる。
そして途端に視線を空に向けた。
「なんかさ……乙姫ちゃんて、護りたくなるんだよね」
ほんの少し、切なげに目を細めながら虎太郎は呟いた。
「それは俺達が――」
「そうかな?」
青の言葉を遮り、青の眼をまっすぐに見つめる虎太郎。
いつもの子供っぽさを感じさせない眼に青は視線を逸らした。
眉根に皺を寄せる青に苦笑して、別の話題へと話を移すことにした。
「それにしても、戒ちゃんたちも仕事して欲しいよね。」
頬を膨らませながらそんなことを呟いた虎太郎。
“戒”という名が出た瞬間、青の眼は鋭く細められた。
「虎太郎」
「わかってるよ。別に親しくしてるわけじゃないよ。僕だって親しくなんてしたくないよ。でも、同じ生徒会の一員だし、同じクラスだし険悪な雰囲気になるのが嫌なだけ。」
肩を竦めながらうんざりとした表情で答える虎太郎。
彼には珍しく、その相手に少なからず嫌悪感を抱いているようだった。
室内になんとも言えない空気が漂い始めた頃、予鈴が学校内に響き渡った。