妖恋華
「なんだこれは…!!」
忌ま忌ましそうに声を荒げる妖とそれを阻む光の壁があった
「結界……」
後ろに居た少女がそう呟いた
しかし、乙姫の耳には届かなかった
そんなことよりも胸元で青く光る石が乙姫の思考を支配していたからだ
それは、母である織姫からもらった石の首飾り
それが何故今光っているのか―――何故、妖怪を近づけさせないのか
しばらく石を見つめていた乙姫だが、そうもしていられなくなった
目の前の自分たちを護る光の壁が軋みをあげはじめた
「ど、どうしよ」
「意識を集中させて」
混乱する乙姫に少女の冷静な言葉がかけられる
困惑しながらも少女の言うとおり、精神を集中させようと目を閉じるが
やはり、こんな状況になったことなど一度もないため上手くいくはずがない
妖怪の声や勢いが乙姫を更に追い詰める
お母さん!―――――
もう駄目だ――そう思った瞬間だった
「こんなところで何をしている」
「大丈夫?乙姫ちゃん」
この声は聞き覚えがある――