妖恋華
元気のいいやつ――などと思いながら、横でこつこつと味噌汁の準備をする乙姫に視線を滑らせる
すると、乙姫もちょうどこちらに視線を向けてきた
「具は油あげと豆腐でいいかな?」
「あ、ああ。……手際がいいな」
首を傾げながら見上げてくる乙姫に青はとっさに視線を逸らすが、隣から聞こえる包丁の音に再び視線は乙姫に向く
手際がいい――思ったことをそのまま口に出してみると、彼女の具材を切る手が不意に止まった
俯きかげんの乙姫の表情は青からは見えない
青が口を開こうとしたときには乙姫は笑顔で口を開いた
「実は一人暮らししてたの。だから家事は一通りできるんだ」
今にも泣きそうな笑顔だった――聞いてはいけないことだったのだろうか
高校生の一人暮らしはそこまで珍しいわけではない、が―――確か彼女には母親がいたはずだ
そこに、この泣きそうな笑顔の理由があるのか―――と思い至り、青はその話題には触れず自分の料理に集中した