妖恋華
二人の様子を見て思ったが、昨日といい今日といい、彼らは食べるのが異常に早い
昨日は自分が遅いかのように感じたが―――違う。
二人が早いのだ
しかし、こんなところで迷惑をかけるわけにはいかない―――乙姫は箸の動きを早くする
ご飯を頬張る乙姫の耳にくすり、という笑い声が届く
目線を上げると笑う虎太郎が目に入った
「乙姫ちゃん、そんな急いで食べることないよ」
「でも、早く片付けたいだろうし……」
「そんなの気にする必要ないのに。ねぇー?青ちゃん」
「お前はまたそうやって、………」
何故、わざわざ話を振る必要性がある――首を傾げる虎太郎にうんざりとしたようにため息をついた
「ごちそうさまでした!」
パチンと手を合わせ行儀良く挨拶をする
それから乙姫も食器を手早くまとめた
それを確認し、乙姫を待っていた二人はそれぞれ食器を手に持った
それを見た乙姫も食器を手に持ち、彼らのあとを追い掛け台所へ向かった
予め水が張ってある盥に食器を浸けていると、玄関方面から引き戸が開く音が耳に届いた
「華紅夜様が帰ってきたみたい」
虎太郎の言葉に少なからず、反応してしまう
華紅夜は乙姫にとってはどう接していいのかわからない難しい存在だった
「ここはもういい。お前は風呂にでも入ってこい」
乙姫の肩には青の手が載り、乙姫を促す
「でも、後片付けが………」
「気にするな。今までは俺一人で行っていた。お前がやらなくても困ることはない」
そう言われてしまうと何も言えない
「じゃあ、お風呂に入ってきます………」
台所から出たとき、ちょうど華紅夜がこちらに来ており、乙姫は軽く頭を下げて逃げるように二階に上がった