妖恋華
「あー!青ちゃんずるい!!乙姫ちゃんと仲良く朝食作りだなんて!!」
朝には似つかわしくない叫び声のような声に反応して後ろを見てみると、虎太郎が指を差して頬を膨らませていた
「……虎太郎。静かにしろ。華紅夜様はまだ就寝中だ」
やれやれといった風に、青は虎太郎を諌める
それに虎太郎はへらりと笑い“ごめんごめん”と言いながら台所に足を踏み入れた
「おはよう。虎太郎くん」
「おはよう!…じゃなくて、乙姫ちゃんひどいよ〜」
笑顔で挨拶を返したかと思えば、次の瞬間には目に涙を溜めて詰め寄る
乙姫はただ目を瞬かせ、首を傾げる
「昨日、例の話を聞いてくるかもしれないって、僕ずっと起きてたんだよ〜!」
「あ!…ご、ごめんなさい!」
乙姫は勢いよく頭を下げた
すっかり忘れていた――何せ、突如“明日から学校に行け”なんて言われたもんだから、他のことを考える余裕がなかったのだ
おまけに青には意味深な話をされるしで――正直、虎太郎の話は忘れていた
「うう…しょうがないなぁ、もう!」
腰に手をあてて、頬を膨らませているが、既に怒った表情はない
「話は終わったか…?」
虎太郎と乙姫の話に一段落着いたのを確認し、青は話を切り出す
「虎太郎、今日からこいつも学校に通うことになった」
「ええ!?でも、準備とかの理由で来週になるんじゃなかった?」
疑問いっぱいという表情を浮かべる虎太郎に青は眉根を寄せて答える
「………摎の頭首が動いたらしい」
「…!なるほどね」
虎太郎は一瞬驚いたようだが、すぐに納得し、ため息にも似た呟きを漏らした