妖恋華

「二人とも、その摎頭首ってどんな人なの?」

「いけ好かない奴だよ」

黒い虎太郎を見た――瞬間的に乙姫は思った

虎太郎の笑みが黒いのだ
まるで何かを蔑んだときのような、そんな表情に似た冷笑


「虎太郎…黒い」

青が諌めるように言えば、虎太郎はハッとした表情になり、次の瞬間にはいつも通りの可愛らしい少年の笑顔を浮かべた

“えへへ”と笑う虎太郎の隣で乙姫は声を落として青に話しかける

「虎太郎くんて……もしかして、ものすごく腹黒い?」

「もしかしなくても、な」


そんな会話に気づいてるのか気づいてないのか、虎太郎は笑顔を向ける

「虎太郎、掃除は終わったのか?」

「まだだよー。これから!乙姫ちゃんも一緒にやろー!!」

「え…?」

そう言って虎太郎は乙姫の手を引き台所を後にするのだった

青は思わず声をかけそうになるが、完成した弁当を見て“まあ、いいか”と思い、朝食に取り掛かった







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