妖恋華
人口の増えつつある廊下を突き進むとある教室へ行き着く。
そこには虎太郎がただ一人そこにいた
生徒会室――それがこの閑静な部屋の名前だ
ガララと少し乱暴に開いた扉だが、虎太郎は驚くことなく“あれ?乙姫ちゃんは?”と一緒だろうと思っていた彼女がいないことに疑問符を浮かべる
「鬼瀬と一緒だ」
「乙姫ちゃんは紅ちゃんのクラスかー。青ちゃんと同じだね」
おそらく華紅夜の指示だろう。この閉鎖された村で権力を持つ神薙家の指示であればそういうことも可能なはずだ
そんなことを考えながら青は虎太郎の前に座った
「青ちゃん、何か怒ってる?」
首を傾げる虎太郎には、もちろん悪気などはない。しかし、虎太郎の言葉を聞いた青は不機嫌さをあらわに無言で応える
耳に残ったあの男の言葉。
“お前も同じくせに”
「………」
「あーあ。そんな怖い顔して」
自然と刻まれた眉間のシワは今の青の機嫌を象徴している。
こんなときの彼は放っておくのに限る。虎太郎は肩を竦め、手に持っていた紙へ視線を向けた
紙に記された内容は生徒会に関係なく、ある人物について記されている
「志貴野 真紀…か」
虎太郎は思案顔で呟いた