妖恋華
「何してるの?」
首を傾げてこちらを窺うのはふわふわの金髪の持ち主、虎太郎だった
「なんだ虎太郎く…先輩かぁ」
知った人物だということに安堵の息をつきつつ、言い直す
ずっと、といっても2、3日だけだが思いの外“虎太郎くん”という呼び名が染み付いていたらしい
慣れるにはもう少しかかりそうだなぁと頭の片隅で考え、ふと何故彼がこんなところにいるのかと気になった
「どうしてこんなところに?」
「それはこっちのセリフだって言いたいとこだけど…。僕はサボりで」
「サボり!?」
かわいい顔して、なんて不良なことを!
そんな考えを口に出していたなら虎太郎は顔をしかめていただろう
その少女のように愛らしい顔立ちは本人はコンプレックスを持っているようだ
「そう驚くことないと思うけど?だって乙姫ちゃんも、でしょ」
「あ…」
そういえばそうなるのか…
青を探すのでそんなこと忘れてた
ぽかんとする乙姫にくすっと笑い、虎太郎は乙姫の手を引っぱった
「え!?あの――」
「いいからいいから」
何が、と問う間もなく教室に引き込まれる。そして、“はい、どうぞ”とパイプ椅子に座らせられる
乙姫を席に着かせると虎太郎も正面の椅子に腰をかける
「あの…。私、青を探さなきゃいけないんです」
「青ちゃんを?」
「はい。なんだか様子が変で…」
「………。たぶん大丈夫。教室に帰ってると思うよ。青ちゃんは僕と違って真面目だから」
自分で言うのはどうなんだと思いながらも、ニコリと微笑まれては何も言えない
「…そうですか。じゃあ、私も戻りますね」
「待って」
どこか鋭くて真剣な声で呼び止められ、立ち上がりかけていた動きが止まり、虎太郎を不思議そうに見つめる。