妖恋華
「でも、君は帰ってきた。だから摎もみんな君を“花嫁”にしようとしてる」
「でも“花嫁”は神薙に限らないって……」
ならば自分じゃなくてもいいはずだ。なのに“花嫁”にしようとしている?
「君は特別。今はまだ分からないかもしれない……でも、秘められた霊力は…多分どんな人間よりも強い」
まるで確信したように言い切る虎太郎に違和感を覚える。
そもそも“霊力”というものが今だによくわからない
それは感覚のようなもの?
でも自分の中で変わったものはない
「いずれわかるよ」
難しい表情に虎太郎は微笑む。
しかし、そう簡単に思考は切り替えられない。
そのため、“ま、そうならないことを願うけど…”という虎太郎の呟きは乙姫の意識には入らなかった
「続き、いい?」
「あ、はい。お願いします」
乙姫が促すと虎太郎は一つ頷いて口を開く
《いきなりこんな村に連れてこられちゃ、被害者の女の子たちも普通は納得できないよね?》
それは身を持って知っている。
納得なんてできない。
乙姫は頷く
「君はまだ戒ちゃんに会ってないから…そう言うのかな?」
「…?」