妖恋華
「なんで…なんでそんな風に言ってくれるんですか?」
「僕も青ちゃんも旧《フル》くから神薙の巫女に仕える一族、だからかな。守護妖《シュゴヨウ》って言うんだけど…。守護妖《ボクラ》は巫女の一番の味方。」
「守護妖?」
「文字通り、妖…なのかな」
虎太郎は気まずそうに目線を横にずらす
自らを“妖”なんて言いたくない、思いたくない――
「虎太郎先輩は妖なんかじゃありません」
「へ?」
自分の思いを口に出していただろうか。一瞬前のことを省みるがそんな記憶はない
「妖っいうのはこの前見たような人を襲って楽しんでいる奴のことを言うんだと思います。優しい虎太郎先輩が妖なんてことないです」
「………」
唖然、というのかこんな時は――。
「あ、えっと…分かったようなこと言ってすみません!」
来たばっかりの私が何を偉そうに言ってんだろ―――後悔しつつ頭を下げる
しかし、聞こえたのは虎太郎のほっとしたような声だった
「…ふふ、ありがとう」
驚いて頭を上げると嬉しそうに目元を和ませる虎太郎が視界に入った。
「やっぱり乙姫ちゃんは大丈夫だ。うん、これなら青ちゃんも」
小さい声で呟くそれは独り言だろうか。上手く聞き取れない
首を傾げ、虎太郎の次の言葉を待っていると、再び真剣な表情で虎太郎は口を開いた
「乙姫ちゃん。青ちゃんはちょっと血に敏感なんだ。」