魔王城にいらっしゃい!
勇者からの宣戦布告

見事なまでに紅と黒で統一されたゴシック調のシックな部屋。

ただっぴろい空間の中央に、冴えた紅が置かれている。

−−この紅い置かれている物体は何なのか?
−−そもそもこの部屋は一体何なのか?

その答えを知れば、恐らくこの世界中の生きとし生ける者達が恐れ戦くことだろう。

ここは、魔王城・最上階、魔王執務室。

そして部屋の中央に置かれているのは紅に染められた魔王ディスク‥通称、血塗られたルーレット。

この机では、歴代の悪名高い魔王達が数々の侵略の計画書に判を押してきた。

そして血が流れ侵略が進む度に、黒かったはずの魔王ディスクが段々と紅みを帯びていったのだと言う、有名な伝説の机なのだ。

その都市が生きるも死ぬも、この机で魔王が判を押すか否か。運命はこの場所で決められる‥。
そういった意味を含めての『血塗られたルーレット』なのだそうだ。

その机の正面にある、革張りの紅色の豪奢な回転イスには小さな少年が座っていた。

否、その場所には『ただの少年』は腰掛けることは出来ない。

ここに座ることが出来るのは、その世代の現役の魔王のみなのだから_。


トントン、と乾いたノックの音が部屋に響く。
少年はチラリとその音のした扉を見て、また視線を自分の手元に戻した。

「魔王様、失礼致します」

「‥‥」

「あの‥魔王様、入っても宜しいでしょうか?」

扉の外から困った様な、どうするべきかはかり兼ねた様子の声がする。

少年はキィ、とイスを回して扉の方に向き直った。


「いいよ。入っても」


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