魔王城にいらっしゃい!
秘密の部屋には豪奢な装飾のどでかい鏡が貼られていた。
「天空の使者、天空の使者、マトス国の王が貴殿を呼びつける!」
ついでに小さな噴水も発見した。
「勇者の血を引くと称する兄弟二人を連れまいったのじゃ!真意の程を判定願う!」
すると驚いた事に何と、目の前のどでかい鏡が突然発光し出した。
「ぅうわっ!眩しいっ!」
目を開けていられなくて、反射的に光りから身を庇う体制をする。
そして次に俺と弟が目を開けたときには、目の前に、前代未聞、摩訶不思議な光景が広がっていた。
「‥て、てんしだぁ!!」
白鳥よりも白く、青みがかった左右の堂々たる翼。白銀の絹のように滑らかな髪。
頭上には神々しい程の光を放っている天使の輪っかが、ピカピカと浮かんでいた。
その美しさは、しばし唖然と時を忘れてしまう程だった。
天使の長い睫毛が開き、サファイアを思わせる碧の瞳がこちらを見据える。
『_で、勇者かもしれない奴ってどいつ?』
‥‥。ん?
『まさかその小汚いのじゃねェだろな。』
天使は眉を潜めて、俺の面を嫌なものでも見るような目で一別した。
‥いや、待て待て待て。
これは音声システムの混線に違いない。
この綺麗な顔からこんなゾンザイな台詞が出て来るわけないじゃないか、嫌だなァ、ハハハハ‥。
「さようじゃ、天空の使者殿。この田舎者の兄とその弟である。」
『ゲッ、それで俺にチェックしろってーの?サイアク‥』
前言撤回。
この汚い言葉の羅列は、あの薄紅色の天使の口から発信されている。
『最近いろいろとデマが流行っててさァー‥、あっちこっちで勇者のニセモノ?が出回ってんの』
でさー、そんなチェックなんて出来る奴はカナリ少数なわけー。だから俺みたいな優秀な天使が引っ切りなしに働かされてさァ、もうサイアク?っつーかー‥。今日だってホントは有給中だってーのに急遽借り出されちまったしさァ‥。
「も、もういいから早くチェックしてくれよ!」
いい加減長い!
天使のクセに何でこんなにお喋りなんだコイツは!