魔王城にいらっしゃい!
『ああ、そういえばチェックだっけか?』
天使は今思い出したような顔でポンと手を叩いた。
『いいけどさ、俺汚いのは御免だからな。』
「どうしろと!?」
『とりま、手洗ってこいよ。その後ワインで消毒な。』
「し、消毒‥!」
「兄ちゃん、洗面台は後ろにあるよ。僕先に行ってるから。」
「あ、ちょお前待て、待てって!」
弟を追いかけて俺は洗面台で言われるがままに丹念に手を洗った。
‥まったく、人の事を汚い汚いと連呼しやがって!
自分は体中ピカピカ(そしてキラキラ)しているものだから余計にタチが悪い。
そしてこちらも汚いと言われた面を、石鹸水でゴシゴシと洗う。
くそう、俺だって人並みに傷つくんだからなあ、毒舌おしゃべり天使めー!
『よー、お帰り。消毒すっから手ェだしな。』
と言って指にジャバジャバとワインをかける。
天使の事だから白ワインだろうと思ったら、赤ワイン‥、それも年代ものの品を手にしていた。
‥なんだか血みたいで趣味が悪い。
『今からチェックを開始します、皆さん私語は慎むよーに。』
そういえば、コイツの登場によって国王が空気と化している‥。
処刑と背中合わせの状況を改めて思い出すと、自然と心拍数が上がっていく。
目をつむって手を差し出したままチェックが終わるのをやり過ごそうとした。‥が、何やら指先に生温かい感触を感じる。
「‥うあっ!?」
舌だ!!指を生暖かい舌がチロチロと舐めている‥!!
「あほっ!何してんだ!」
『こら、私語禁止だってさっき言ったでしょ?』
言っとくけどこれ、チェックなんだよなー。
暴れたら殺すから、暴れんなよ。
(そ、そんな事言われてもー!!)
俺は心の中で盛大に叫んだ。
つか天使に指舐められてるって‥、客観的に見てどーいう状況なんだろう?
目を開けると正しくイケナイモノ・ワールドである。
『‥‥(ガリッ‥)』
え?ガリッ?(^q^)
「い、痛い!痛い!噛まれた!肉噛まれたっ!」
『‥ふう、血液採取完了。』
指の腹には傷口からぷっくりと紅い血液が浮かび上がっている‥。
(異文化は色々と無茶苦茶だ‥。)