魔王城にいらっしゃい!
今から数カ月前のことだ。
勇者はまだ、ただの青年だった。
『魔王が下界を占領しに来るらしい!』
という噂が風のたよりに、アッチからもコッチからも聞こえて来てくる様になった。
その噂は勇者の住む小さな農村部の村まで届くぐらいに大きな話しだった。
今から何世紀も前に『伝説の勇者』が倒した悪の帝王『魔王』が復活したらしい。
世界中の王の元に『天界の使者』が現れ、
《悪の帝王『魔王』を倒す為に協力するので、その代わりに『伝説の勇者』の血を引く子孫を探してほしい》
と伝えたらしいのだ。
「そんな昔の英雄サマの子孫なんて、もー居るわけないじゃん!何それバカなの?バカなの?(笑)」
と思っていた矢先。
今は亡き両親に代わって俺と弟を育ててくれた親戚のオジさんからその阿保みたいな『マサカ』の話しを聞かされた。
俺たち兄弟のご先祖サマは、なんと『伝説の勇者サマ』だったらしいのだ‥。
ゲッ、マジで?(嘘だろ正気かよ!!)
最初は「しらばっくれればいいだろ‥、
つか俺そんな特別な力とかマジねーしww(プギャー」と俺は思っていたのだ。
しかし噂は回る回る。
いつの間にか村の外に漏れ出して近くの王様の耳にも入ってしまった訳だ。
そうしてオジさんの所に俺と弟宛ての半分脅迫文じみた城への招待状が届いてしまった訳だ。
この王様は、こっぴどい我が儘と横暴さで大層有名なのだが、その他にも気に食わない事があるとすぐ難癖を付けて人を死刑にする恐ろしい王様なのだ。
俺達がもしこの招待状を無視するような事があれば間違いなくオジさんが酷い目にあうのだろう。
今まで両親に代わって俺達兄弟を育ててくれた人に、そんな恩を仇で返す事は出来ない。(いくら俺でも)
仕方無しに俺は半袖ハーパンにリュックサックと布団叩きを持って、弟と手を繋ぎながら王様の居るお城に向かった。
この時の俺は、まさか自分が勇者になるだなんて事はちっとも考えて居なかった。
ただちょっとお城へ行って、
「サーセンなんか俺たち伝説の勇者?の子孫みたいなんですけどー、全っ然そんな才能とか無いんでぇ、他探して頂けませんか?ww」
とか挨拶して帰ろうとしていたのだ。